その民宿はL字を横に倒した建築で、
玄関は曲がり角にあった。
「L」を片手で作った時に、親指の付け根にあたる部分だ。
そこに立って「ごめんください」と一回。
かしこまらずに「ごめんくだせぇー」ともう一回。
…しばらく待っても返事がねぇ。
短い方の廊下の先には裏戸があり、
半開きの隙間から庭と海と洗濯物が揺らいで見えた。

「出かけちゃったのかな」
「みてぇだなぁ…」

俺たちは湘南は江ノ島に来ていた。
江ノ島は湘南海岸に突き出た陸繋島で、
関東で地震が起きるごとに隆起しているっつー頭の高い小山だ。
とくに天気の良い今日は富士山まで拝め、
この民宿もなかなかの急斜面に建てられていた。
階段を何百段上がったか。ここまでくるとちょっとした山登りだ。

海で泳ぐんなら
まず財布や服を預けなきゃいけねぇ。
海岸沿いの掛茶屋も宿も空きがなく、
俺たちはわざわざこの江ノ島まで来て、この宿を見つけたんだった。
荷物を預けたのが昼、で、帰ってきた今が夕方。
昼間は受付に婆さんがいたが
小部屋には誰もいない。
洗濯物でも取り込んでんだろう、
波間にシーツの擦れる音が聞こえた気がした。
…取り込みが終わるまで、待たなきゃいけねぇのかよ。
預けた鍵を返してもらわにゃ、部屋には入れない。
俺は腕組みして裏戸を睨み、婆さんが帰ってくるのを待つことにした。
そんな真横で正ちゃんは「あっ」とこぼす。
「鍵置いてあるよ」
「！？」
受付の端っこに、透明で長細い棒がある。
108と彫られた数字は、昼に案内された部屋その番号だった。
「いい加減だなおい！」
誰でも拾える場所に放っておくとはよ…。
怒ったっていいのに、正ちゃんは変わらずの表情でいる。
「何時に戻るか言ってなかったから。置いといてくれたんだ」
「くれたんだ、じゃねぇって……」
「でもこれで部屋に入れるね」
防犯のために荷物預けたつもりだが、
これじゃ鍵のねぇロッカーに置くのと一緒じゃねぇか。
宿の空きとその安さに得した気分になっていたが、
盗難に遭ったなら「仕方ないね」と諦める理由にしかならねぇ。
…だがこういう時、正ちゃんがたくましく見える。
正ちゃんに「仕方ないね」と言われたら、
そういうもんかーと思えちまう。
…泳ぎ疲れ、そして登り疲れた俺は文句を飲み。
とぼとぼと正ちゃんの後を追った。

部屋は長い廊下の端っこにある。

「もう5時なのに、まだ明るいね」
「しっかり夏だな」
「…早くシャワー浴びたいな」

海水と砂を落とすための簡易なシャワーが掛茶屋にあり、帰りはそこを借りてきた。
3分もない短い時間制限で、おまけに冷水。
洗い流せた心地がしねぇ。
少しうつむいた正ちゃんの首筋はまた汗ばみ、赤らみ。毛先を張り付かせていた。

…ミンミンとセミが鳴く。
古い床板が軋む。
正ちゃんが108に鍵を挿す。
分厚い扉の中で、ジョリっと開錠する音がした。

「……」

そのままの手つきを止めて、正ちゃんは俺を見上げる。
っつーのも俺が背筋を伸ばしたからだ。
開錠音がハルディンの扉そっくりで、
それだけで俺は脳裏に可愛い正ちゃんを思い浮かべちまった。
こんな駄目なパブロフの犬、俺自身もどうかと思う。
だが火照った正ちゃんを見てなんとも思わないやつの方が気が知れねぇ。
これは健全な反応だ、そう0.1秒で開き直った俺はじっと正ちゃんを見つめ続けた。
正ちゃんも察したのか、はっと目線を手元に落とし、わわっと慌てて扉を開けた。


部屋は縦長の六畳。
窓辺には低い机と椅子が二脚あり、
使い古されたガラスの灰皿が置かれている。
ほんのり夕色がかった日差しを受けて、明るい色を机に落としていた。
俺は正ちゃんから鍵をもらうと、ビーチサンダルを脱ぎ捨て、
部屋奥の金庫へと向かう。
金庫の鍵と部屋鍵は共通だ。
小さく黒い鉄塊に、俺は体をかがめて取りすがる。
…中にはちゃんと茶封筒があった。
その中にもしっかり、現金が入っていた。
「はぁ〜……」
「心配しすぎだよ」
「だってこの宿なんっか怪しい……」
昼間にすれ違った客たちは、なぜかおかしな奴ばかりだった。
顔を伏せて急いで走り去る者や。
逆にこちらを覗き込んでくる野郎もいた。
「怪しい人がいたら、女将さんが注意してくれるよ」
「女将は100超えてそうだしもう〜」
…まぁ財布が無事だったのは幸いだ。
大した額じゃあねぇが、これがないと明日の電車で帰れない。
俺は財布を金庫にしまいこみ、念を込めて柏手を打った。
盗まれませんように、ではなく。
盗んだやつに天罰がくだりますように、だ。


正ちゃんは一席に座った。
窓を開けて海風を呼び込むと、前髪をなびかせる。
目の前は満杯の相模湾。それと江ノ島の裏磯が見下ろせた。
俺は対面に座り、肩肘をついてそんな正ちゃんを見つめていた。
「やっと落ち着けたね」
「おぉー……」
正ちゃんはたっぷり目を閉じた。
眠たそうな様子につられ、俺も目を閉じる。

……まぶたに思い浮かぶのは、黒山の人だかりだった。
夏場の海浜浴場の人混みは想像以上に凄まじかった。
客層は主にファミリー、アベック。
浅瀬は泳ぐ隙間もなく、
波打ち際はごった返す銭湯のようだ。
とてもじゃねぇが泳ぎや潜りを練習するような場じゃない。
かろうじて遠浅は人が少なく、そこまで正ちゃんを連れて行こうとしたが……。

正ちゃん、全く浮かべなかった。

泳ぐ泳がないの問題じゃねぇ、全く浮かべなかった。
小さくて軽いのに、重心と体幹が異常にしっかりしていて、
「鉄か？」と生体を疑るほどだった。
「柔道やってたから…」とまた謎の言い訳をしていたが、
正ちゃんは要するに「脱力する」ってことが苦手なようだった。
結局自力で浮かせるのを諦めて、持ってきた浮き輪をかぶせ、
遠浅までひっぱったんだが…。

「ぷかぷか浮いてる正ちゃん。可愛かったなぁ」
「……」
「可愛かっ…ったぁ……」
「やだな」
「生まれたてのクラゲとおんなじくらい、可愛かった」
「褒めてないよ」

そんな正ちゃんの前で泳ぎを実演したが、
質問するでも関心するでもなく、終始真っ赤な顔でうなづいているだけだった。

ふと薄目を開けたら、正ちゃんはこちらを見ていた。
「泳げなかったけど。楽しかった」
「なら、来てよかったわ」
俺だけが楽しんでると思ったからよ。
俺はにっと笑った。
「いつか君くらい泳げるかな」
「練習すりゃあな」
「明君も最初はそうだった？」
「あーいや…」
正ちゃんと違って、すぐに浮けたし、すぐに潜れたなんて、言っていいもんか。
やる気を削がねぇちょうどいい言葉を探していると、
俺の目の泳ぎを察したらしい。
「君は器用でいいなぁ」
「正ちゃんが下手すぎっていうか……ぁ」
「……」
正ちゃんには嘘をつけねぇ性分だから、つい本音が…。
すると窓の外に顔を向け、眩しそうに目を細めた。
「明日も休みだから、また少し泳ぎたい。
　…まずは浮き輪なしで浮けるようにならなきゃだけど」
「そんなに泳げるようになりてぇんだ」
正ちゃんがぱっとこっちを向く。
珍しく、わかりやすい笑みを浮かべていた。
楽しそうに。照れ臭そうに、「うん」とうなづいた。
…この笑顔を見ると、心の内側をくすぐられたような心地になる。
俺も笑いを堪えきれなくて、はっと笑い声をこぼしちまった。
「理由、教えてくんねぇの？」
「うん」
「え〜えへへ〜なんでェ〜」
「内緒」
自分でも気持ちわりぃ笑い方。
なのに正ちゃんはこんな俺をきもいとも思わず、また笑みを深めた。

「…シャワー、浴びてくるね」

自然を装い、不自然に会話を区切られる。
正ちゃんはクローゼットから薄い浴衣とタオルを借りると、
パタパタと部屋を出て行く。
対して俺は椅子にもたれたまま、呆然としていた。

…いや、何だ。アノ可愛い隠し事の仕方。
思わずポンしてポンして対々和(トイトイホー)するとこだったぜ。
けどよ。そうやって無理やり聞き出すと、
そんなつもりはなくても正ちゃんを笑い者にしてるみてぇで嫌なんだ。
正ちゃんのタイミングで話してくれるまで、
俺は待ちの姿勢でいるつもりだ。麻雀も、何事もな。

俺はその場で立ち上がり、ぐっと真上に背伸びする。
強張った筋肉が伸びて安らぐが、肩を下ろせばどっと疲れが降りかかった。
意図せず漏れたあくびに促されるまま、
部屋の真ん中に寝転がる。
肘をついてテレビを眺めていたら、
見慣れない神奈川のローカルニュースが始まった。
トンビの影が部屋を横切る。
開いたままの窓から、鮮明な高鳴きが聞こえた。
……家からたった1時間の距離なのに、まるで異世界へ来たくらいの気分だ。
正ちゃんとどっか泊まるにしても窓のないホテルばっかりだった。
こうしてのんびり、なんもしない時間も、
たまには必要なのかもしれねぇ。
……俺はうつらうつらと、波音に目を閉じた。


俺が初めて泳いだのは3歳の頃。
波止場から海中の魚をのぞいていたら、前のめりに落っこちた。
…やべぇ、このままじゃ死ぬ。
そう思って必死にもがいたら、両手は自然と水を掴み。両足は水を蹴っていた。
海面に顔を出した時、泳げたって感慨よりも生きてるって実感が先だった。
……そんなこんな、水難がきっかけで泳げるようになったわけで。
俺の泳ぎ方は参考にならねぇんだよな。
どうしても泳ぎたいっつー正ちゃんを、
一体どうしたもんかなぁ……。


鼻の下がムズムズする。
薄目を開けりゃ目前につむじがあった。
俺に寄り添って、俺の胸で深呼吸する正ちゃん。
テレビの音量が2つか3つ下げられている。
夕日の色が少しだけ濃くなっていた。
うっかり眠っていたのは、ほんのちょっとの間のようだ。
頭に口づけたら、正ちゃんが上目使いにこちらを見る。
「おかえり」
「うん」
「髪、まだちょっと濡れてるぜ」
「この方が涼しいから」
「風邪ひくよ〜」
「大丈夫。君があったかいから」
「…んじゃ、あっためねぇと」
抱き寄せたまま仰向けになり、腹の上に寝そべらせる。
腰元で両手を結めば、正ちゃんの冷たいおしりに小指が触れた。
…軽く、口づけられた。
さっきまで笑っていたくせに、急に下唇を噛んで隠す。
口づけと同時に正ちゃんの体温が急速に上がった。
……また自分でやって、また自分で恥ずかしくなってんの。
何回キスしたか数えきれねぇほどなのに、
いまだ初心な反応を見せる正ちゃんに俺は不可避だった。勃起が。
水着とズボンと正ちゃんの浴衣越しに、柔らかい体へぶつかる。
「ぁ……」
痛がらせちまった。でも俺の気持ちだとわかると、
正ちゃんも自身を硬くした。

「正ちゃん。だめ」
「……？」

正ちゃんは無意識に、自身を俺にこすりつけている。
「それだめ」
「？」
やっと動きを止めてくれる。
……かと思えば、今度はより素早く揺らされた。
「だめだめだめだめだめだめ」
「何が…？」
「この宿、そーゆーとこじゃないだろ？」
「……」
爽やかな波の音。
トパーズ色の夕日。
な、見渡してくれ正ちゃん。
ここはラブのつくホテルじゃねぇんだ。
俺はシたいから勃起してるんじゃねぇ、
愛してるから勃起してるんだ。
動物みたいに盛ってると思わねぇでくれ。
「……、」
すると正ちゃんもわかってくれたのか、申し訳なさそうに眉根を下げる。
ごめんの代わりを言うように、
もう一度ちゅっとキスしてくれた。
当然、正ちゃんに向けてまたちんこが膨らむ。
一度は引いた正ちゃんだが、
この反応に頬を染め、また腰を動かした。
「ッダメダメダメダメダメダメ！」
「？」
「普通の宿でしちゃいけねぇのっ」
シーツを洗う婆さんを思い出せ。
畳を掃除する婆さんも想像しろ。
いたたまれねぇだろ。
俺の真剣な眼差しに、正ちゃんは再びはっと我に返る。
羞恥のあまり、瞳を震わせていた。
「ご、ごめん…。……変なことした」
「……〜」
誰も悪かぁねぇんだ。
俺は泣く泣く正ちゃんを抱きしめ、肩に顔を埋めた。
「えっちは出来ねぇけど。…こうやってくっついて、今日は寝ような」
「…うん」
「ぅおぉおッだめだめだめだめだめ」
「？」
「腰！ッ動いてンじゃんッ」
「全然、してないよ」
「動いてる動いてる動いてる！」
「ちょっともだめ……？」
「めめめめめ」
肩を掴んで引き剥がし、勢いのまま畳へ押し倒す。
その拍子に正ちゃんの襟が乱れ、白い胸元が広がった。
「メッ……！」
叱るつもりで発したつもりが。吐血しそうなほど苦しい発声になる。
正ちゃんは突然のことに目を回していたが、
真っ赤になった俺を見て、熱を移されたように真っ赤になる。
そうして顔ごと真横に逸らした。
…細い首筋が、唾を飲んでこくりと揺れる。
「浴衣、着たよ」
「……！！」
「こういうの……初めてだね」
「そ、…そうだな」
「初めてなのに…。……何も言ってくれない」
「っ可愛すぎて直視できねぇの……」
ふっとこちらに顔を戻す。
潤んだ目に見つめられ、俺は怯んだ。
「声、絶対出さないから」
「…！」
「少しでも僕が変な声出したら……止めていいから」
…変、だとか。
一度もそんな風に思ったことねぇよ……。
押さえつけていた肩を離し、畳に手をつく。
正ちゃんは自由になった手で、壁際のティッシュ箱に指先を伸ばした。
けれど届かず苦戦している。
俺は困っている正ちゃんを見ると助けにゃいられねぇ性分でもあるから、
ティッシュ箱を取って渡してしまう。
そいつをもらった正ちゃんは、照れたように顔を隠した。
「…ティッシュ箱、だよ」
「ティッシュ箱、だ……」
「いっぱい入ってる」
「いっぱい……」
「これ、いっぱい敷けばいいよ」
「いっぱい、……敷く……？」
正ちゃんは箱を顎下に下げ。赤らめた目元と口元を覗かせた。
俺が焦らしてるつもりで聞き返していると、思い込んでるようだ。
小さな唇を震わせて、小さな声で呟く。
「こぼさないよう、ティッシュいっぱい敷こう…？」

いっぱい。

「君いつも、いっぱい出して……いっぱい溢れちゃうから」


……俺ぁ真顔で聞いていた。真顔で受け流した。
素人だったら正ちゃんの言葉に鳴いていただろう。
だが、俺は雀士だ。
玄人は己の勝ちだけにこだわらねぇ。
正ちゃんは自覚なしに危険牌を放っている、
何もわからない可哀想な相手に、乱暴な麻雀打てるかよ……。
「正ちゃん。そんなに可愛くてよ、よく今まで生きてこられたな」
「…そこまで言うんだ」
俺はティッシュ箱を優しく奪い取り、ちょっと遠くに滑らせる。
代わりに悪戯っぽく、笑い顔を近づけた。
「俺だって正ちゃんからの誘い、断りたかねぇよ。
　…けど。えっちするなら、ちゃんとした綺麗なとこでな」
「……」
「綺麗にしねぇと、正ちゃんの大事なところにゃさわれねぇよ」
ちゃんとした布団と、ちゃんとした風呂がなけりゃ。
「…汚くないよ」
「手はよぉく洗ってきたが。髪も体も磯くせぇだろ」
「シャワー浴びて来て、」
「いや〜めんどいなぁ〜」
諦めさせて欲しいんだけどな〜。
「…僕は綺麗にしたよ」
「！」
「おしりも洗った」
「！！！」
「……」
正ちゃんは苦しそうに、言いたかなかっただろう申告をした。
……シャワー室で一人、どんな気持ちで……。
そんなの、俺のためだってわかりきっている。
「…指だけ貸して。
　指だけで、我慢するから……」
「正ちゃん…」
首に腕を回され、引き寄せられる。
「自分でも変なこと言ってるって、わかってる。でも……」
震える小さな声で、正ちゃんは呟いた。
「お願い、」
その一言に、体が勝手に隆起する。
正ちゃんのちんこに押し当ててしまい、正ちゃんも嬉しそうに小さく喘いだ。
両足が、俺の腰をさらに引き寄せるように絡みつく。
待ったをかけようとわずかに体を離せば、
熱い視線に引き留められる。
…俺を一心に見つめる、寄り目がちな黒。
その目が半開きの俺の唇を見つめ、無言で口づけを催促する。
それはもうポン超えてカン超えて嶺上開花(リンシャンカイホウ)だ。

……だが。
俺は、勝負を降りた。

正ちゃんの体を抱き上げて、あぐらをかいた膝の上に載せる。
「後ろ向いて」
「…？」
「ここ、座って」
正ちゃんは足を片側に束ねると、くるんと後ろ向きになる。
おしりを俺のあぐらに乗せ、背中をもたれさせた。
その小さな体を、後ろから包むように抱きしめた。
「めちゃくちゃ勃ってんの、わかる？」
「…うん」
「挿れてぇのもわかる？」
「うん」
「俺も我慢すっから。……正ちゃんも手だけで、我慢してな」
最後の返事に音はなく、ただのうなづきだけだった。
俺は右手で正ちゃんの両足を割って、ふとももの内側に滑り込ませる。
左手で帯を緩め、裾を広げた。
…苦しそうに上を向く、正ちゃんのそれ。
パ、パンツも履かねぇで来たの。
正ちゃんは顔を真横に逸らし、両足を閉じて身を縮めた。
「だって……すぐしてくれると思ったから…」
「心外だなぁ、」
家かラブホだったら即挿入していただろう、間違いねぇ。
だが俺の性欲は正ちゃんへの愛しさからくるもんだから、
正ちゃんのためなら我慢だってできるんだ。
正ちゃんの恥骨にぶつかって我慢汁だらだらなのは棚に上げさせてもらう。
「足、開いて」
「ん」と、喉の奥でうなづかれる。
正ちゃんの中では今のは「変な声」の部類なんだろう。
喘ぎがすでに始まっていると知って、俺の頬は下品にニヤケた。